漢字のルーツである中国古代文字を題材にした「墨刻(ぼっこく)」を主宰する原 賢翏(けんりょう)さんと一門アーティストの方々の作品展示『続・墨刻展』が5月31日(土)からスタートします。
会場は日本外国特派員協会(FCCJ)。6月4日(水)にはレセプション&ライブ創作パフォーマンスも開催されます。龜甲會主宰・加藤光峰 (こうほう)氏と出会い、人間が生きることの本質と対峙しながら模索し続ける原さんの作品やパフォーマンスは必見です。
告知フライヤーからご紹介します。
目次
原 賢翏と一門アーティストによる『続・墨刻展』展示詳細
まずは日本外国特派員協会(FCCJ)の公式サイトからご紹介。こちらです。
2025年6月の展示会
墨刻: 筆は刀。墨は刻み込むもの。
墨刻主宰・原 賢翏(けんりょう)と墨刻グループアーティスト
https://www.fccj.or.jp/exhibition/june-2025-exhibition
詳細を抜き出しておきます。
『続・墨刻展』
開催日:2025年5月31日(土)〜6月25日(金)
時間:10:00〜21:00(土曜のみ 10:00〜)
休み:日曜・祝日
料金:入場無料
会場:日本外国特派員協会(千代田区丸の内三丁目2番3号 丸の内二重橋ビル5階)
※土曜日は地下1階からエレベーターで5階へお上がりください。
※ご来場の際、フロントで墨刻展に来たとお伝えください。
アクセス:千代田線「二重橋前駅」日比谷方面出口改札から徒歩約2分ほか
https://www.fccj.or.jp/2015-02-02-04-29-17/2014-10-16-03-04-20.html
◯6月4日にはレセプション&ライブ創作パフォーマンス開催
6月4日(水)には18:30よりレセプション&ライブ創作パフォーマンスが開催されます。どなたでも参加可能です。日本外国特派員協会関係者や大使館関係者といった方々と共に国際的で刺激的な時間を是非お楽しみください。
※入場料:2,000円(1ドリンク付)
※出席のお申し込みはフロントデスク「電話:03-3211-3161」または「メール:front@fccj.or.jp」まで(当日予約なしの来場もOKですが、できましたら御予約を)
中国古代文字とは
中国古代文字と言われてピンとくる人はどのくらいいるでしょうか。簡単ですが説明しておきますね。
時代的には史書に記された中国最古の王朝「夏」「殷」「周」あたりまで遡ります。アバウトですが3300〜3400年ほど前となります。
当時、人間にとって神の存在は非常に大きなものでした。
穀物の豊穣の願いはもちろん、雨乞いや特別な祭りの開催時期など、生活に関するあらゆることを神との対話(交信?)で決めていたようです。 “ 文字のようなもの(象形文字)” を亀の甲羅や獣の骨に刻み、火であぶり、そこから生み出される亀裂などを神の意志として受け入れる占いが人間の生活を左右していました。
手段として使われていた文字のようなものこそが中国古代文字です。
中国古代文字を使った占いによる政治が本格的に行われるようになったのは殷の時代のようです(文字は夏の時代に生まれたという説もあるが説明割愛)。そして周の時代になると、文字は神との対話という領域から発展し、人間同士の意思疎通のために使われるように変化していきました。
ここまでが中国古代文字の時代です。
その後、秦の時代には小篆(しょうてん)という線の太さの均一や左右対称を原則とした統一文字が用いられました。さらに庶民の間での実用化が進むことで文字はより単純化され、隷書(しょうてん)、楷書と変化して現在に至ります。
墨刻(ぼっこく)、そして加藤光峰氏との出会い
原さんは「書」ではなく「墨刻(ぼっこく)」という言葉を使っています。
墨刻は『紙を筆で引っ掻き、墨を紙に刻み込んでいく』という行為を表した言葉です。筆は寝かせずに真っ直ぐに立たせ、滲みやカスレなどを期待せずに、紙に墨を深くねじ込んでいくスタイルによってご自身の世界を表現しています。原さんオリジナルの言葉でもあります。
原賢翏 公式HP
https://bok-koku.com/
原さんがこのスタイルに至ったのは、冒頭にも書いた龜甲會主宰・加藤光峰 (こうほう)氏と出会いがきっかけです。
加藤光峰 公式HP
https://www.kohokato.com/
加藤氏は東京学芸大学書道科の卒業制作『殷人尊神』より一貫して夏・殷・周時代の文字群をモチーフに活動し、古代文字を芸術として開花させた方として知られています。
百聞は一見に如かずです。展示関係の動画を貼っておきます。
原さんが墨刻という新しい名称を掲げ、新しいジャンルとして確立しようとされている姿勢からは、師の世界をさらに深めていこうという敬愛の念が伝わってきます。
墨刻を通じて人間の本質を想起する
神と人間を仲介していた中国古代文字は絵画的な要素が強いのが特徴です。
最近では現代美術として中国古代文字を内包した表現をされている作家さんもいます。例えば「徐冰(Xu Bing) 」による『ニセ創作漢字』、「王冬齢(Wang Dongling)」による『文字の精神化』あたりが有名でしょうか。それぞれに漢字のさらなる未来を開拓するような前衛的な独創性を発揮しています。
対して原さんの墨刻からは『人間讃歌の追求』といった印象を受けます。神を対話するために文字というものを生み出した人間のエネルギーに重きを置いているように感じるからです。
それは人間の精神性の奥深くに入り込んでいくような世界といってもいいかもしれません。
神、自然、そして人間……3000年以上も昔に人間が置かれていた状況に想いを馳せながら作品を見たり、レセプション&ライブ創作パフォーマンスに立ち会うことで、もしかすると人間の本質に気づかされるかもしれません。
お時間のある方は、ぜひ!
<余談>高村光太郎「書について」と造形美、そして白井晟一
この紹介を書くにあたって調べていると、気になる文章と出会いました。
それは高村光太郎の「書について」( https://www.aozora.gr.jp/cards/001168/files/46371_25628.html )。1939年に書かれた書論です。
書き出しからなかなか過激です。
この頃は書道がひどく流行して来て、世の中に悪筆が横行している。なまじっか習った能筆風な無性格の書や、擬態の書や、逆にわざわざ稚拙をたくんだ、ずるいとぼけた書などが随分目につく。
「書について」冒頭(高村光太郎)より
光太郎は「美」を絶対的なものと考え、「美に生きる道」を真摯に歩み続けた人物です。彫刻家であり詩人でもあった彼は、書の造形美を極めていく重要性も語っています。
書を究めるという事は造型意識を養うことであり、この世の造型美に眼を開くことである。書が真に分かれば、絵画も彫刻も建築も分かる筈であり、文章の構成、生活の機構にもおのずから通じて来ねばならない。書だけ分かって他のものは分からないというのは分かりかたが浅いに外なるまい。書がその人の人となりを語るということも、その人の人としての分かりかたが書に反映するからであろう。
「書について」三(高村光太郎)より
さらに調べていくと、松濤美術館などの建築で知られ、「哲学の建築家」とも評された白井晟一(せいいち)も書について語っていました。
私が建築を生業としながらこの十数年、一日の約半分を習書にうずめることができたのは大きな恵みであった。しかし筆・墨をもって紙にむかうことはたしかに一つの「行」に違いなかったし、心と目と手の一如を不断に身につけていなければ「書」にならなかったという経験の反覆は、先達が生きていた時間や空間にわずかでもせまりたいという望みを深め、空間造型の無限の意味を省る何よりの励ましであった。
「顧之居書帖 二」 序文(白井晟一)より
あらためて書についてい考えていくことは、アートの深みを探るためには欠かせないように感じます。
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今回の記事は以上となります。
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