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「安藤忠雄展―挑戦―」は12月18日まで! 現代美術家として身近に感じてしまう建築家、安藤氏の魅力

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圧倒的な物量を提示する安藤忠雄のパワフルさに脱帽

国立新美術館の「安藤忠雄展―挑戦―」がまもなく終了します。12月18日(月)が最終日です。

 

現代美術家として身近に感じてしまう建築家、安藤氏の魅力
By Christopher Schriner from Köln, Deutschland (flickr: Tadao Ando) [CC BY-SA 2.0], via Wikimedia Commons
安藤忠雄(2004年)

 

「原点/住まい」「光」「余白の空間」「場所を読む」「あるものを生かしてないものをつくる」「育てる」という6つのセクションに分けられた展示は、圧倒的な物量だそうです。

模型やスケッチ、ドローイングなどの展示空間は、すべて安藤忠雄自身の手によるもの。建築ファンならずとも、創造する感動や魅力を堪能できる内容だと評判です。

それにしても安藤氏のパワフルさに脱帽です。

 

特設サイトはこちら。
http://www.tadao-ando.com/exhibition2017/

 

 

建築も、アートも、すべては五感体験からはじまる

揺らめく安藤忠雄氏の顔に一筋の光が射す特設サイトのトップ写真は、非常に印象的です。

まさに「光や風を取り入れることで完成する空間」をめざす安藤建築のキモを一枚の写真でしっかりと伝えています。写真からは圧倒的な凄みすら感じさせられます。

 

見所が山ほどある中で最も特徴的なのは、「光」セクションの屋外に再現された『光の教会』ではないでしょうか。

1989年、大阪府茨木市に創られた『光の教会(茨木春日丘教会)』は原寸大スケール! 1分の1スケールモデルをぶち建ててしまうなんて、呆れてしまうほど凄いです。

この教会は1カ所だけ本物と異なる部分があります。それは光が差し込む十字架状のスリットにガラスがはめられていないところです。

人間は自然と共生していくべきだという主張が心に響きます。雨や風の厳しさや光の恵に対する喜びなど、来場者は自然の持つ偉大な力を何度も味わいたくなるのではないでしょうか。

まさに人間の持つ五感を刺激し、揺さぶろうとする意識・試みがこそが、安藤建築の真骨頂といえます。

それはまた、アートの真髄でもありますね。

 

 

「年寄りは去れ!」と思っていたが、活力のある限り進むことが大事

安藤氏は1941年、大阪に生まれました。下町の長屋で育ち、周辺の町工場が遊び場だったそうです。古本屋で出会ったル・コルビュジェの作品集をボロボロになるまで眺めていた彼がでしたが、真っ直ぐに建築の世界に飛び込んだわけではありません。

17歳でプロボクサーとしてデビュー(リングネームはグレート安藤)。動機はわかりませんが、かなり勝ち気な少年だったことが推察できます。当時、ボクシングを断念した理由は、年下の天才ボクサー、ファイティング原田の存在が大きかったらしいですが、それは定かではありません。

ボクシングの道を断念した安藤氏は日本一周の旅に、さらには海外を放浪します。目的はコルビジェ建築を肌で感じるためだったようです。

帰国後は一気に建築の世界へと舵を取ります。建築を専門に学んでいなかったにもかかわらず、独学で活路を見出してきました。

ターニングポイントとなったのは1969年に安藤忠雄建築研究所を設立してからの「都市ゲリラ」としての設計活動です。

ゲリラ戦とは小規模な部隊による臨機応変な戦闘方法のことで、小規模な戦闘ながらも優勢な相手に対してダメージを蓄積させることができます。ボクシングでいえば、少しずつ相手の体力を奪っていくボディーブローのようなものでしょうか。

 

現代美術家として身近に感じてしまう建築家、安藤氏の魅力
By Thomas R. Koeniges (LOOK Magazine, May 13, 1969. p.27) [Public domain, Public domain or Public domain], via Wikimedia Commons
ヨルダンのパレスチナ解放人民戦線/PFLP(1969年)

 

高度成長期の日本の中で既成概念を打ち破る建築作品を次々と送り出すことで、一気に注目を集めるようになります。

そして先程紹介した『光の教会』の建築で建築家としての不動の地位を打ち立てます。

 

現代美術家として身近に感じてしまう建築家、安藤氏の魅力
By taken by Bergmann (ja:Image:Ibaraki_Kasugaoka_Church_Light_Cross.JPG) [GFDL or CC-BY-SA-3.0], via Wikimedia Commons
『光の教会(茨木春日丘教会)』はプロテスタント系の教会

 

そもそも十字架というのは立体物のことを指すものなので、これは正式には十字と呼ぶべきものだと思いますが、安藤氏は立体物を光とのコラボで実現させてしまいました。

まさにコロンブスの卵的といえるでしょう。この神々しく変化に富んだ安藤式十字架の発想が多くの信者たちの胸を打ったことは容易に想像できます。

さらに十字のスリットは天地左右目一杯まで伸びています。ここにも非常に大胆な意思を感じさせられます。

しかも総工費は3500万円という低コストで実現。床および家具は作業現場に使われる足場板を使用。硬めのコンクリートの質感との調和が宗教活動には欠かせない荘厳さと強い意思を演出しています。

 

その後の代表的な建築物の紹介は他に譲るとして、一気に建築界の頂点へと上りつめた安藤氏は現在も多くの案件を抱えながら所員メンバーたちと共に「挑戦」を続けています。

 

 

すい臓や脾臓を全摘している人とは思えない活力

2009年にがんが発覚。胆嚢、胆管、十二指腸を摘出し、2014年にはすい臓と脾臓も摘出。5つの臓器を全摘したにもかかわらず、その活力は衰えることは全くなさそうです。

これに関しては言葉もありません。私なら、そのまま意思消沈して沈没してしまうことでしょう。

今回の「安藤忠雄展―挑戦―」でも期間内にギャラリートークを16回も実施、さらに音声ガイドは本人の解説、そして、いたるところに「青ペン」での追記。

溢れ続ける情熱に私は完全にノックダウンされました。

だいたいインスリンは一日に何回打っているんでしょう。

人間、70歳も過ぎれば若い人の踏み台になるべきだと思っていました。

正直、「年寄りは去れ!」と思っていました。

しかし、それは間違いだったと痛感させられます。

踏み台なんて、屈すぎますね。

安っぽいヒロイズムでした。

 



 

 

最後は作品だが、作家の持っている哲学も鑑賞には重要

自分の好きキライで作品を判断するのはまったくかまわないとは思います。

しかし、作品を自分勝手にジャッジすることは簡単ですが、作品や作家のことを知ることも大切です。この辺のバランス感覚って、うまく言えないですが、すごく大事だと思います。

安藤氏の建築自体は好きかキライかと問われれば、好きではありませんでした。

なんたって使い勝手がいいとは思えない建築が多い印象だからです。さらに私自身がコンクリート自体を好きになれないのも大きな理由です。

しかし、安藤氏の哲学に触れると、また印象が変わってきます。

ただ、建築家としてではなく、現代美術家として非常に身近に感じてしまうのは、いいのか悪いのか悩ましいところではあります。

どうせなら荒川修作氏よりはずっと常識人すぎる気もするので、もっともっとぶっ飛んだ建築を立てていって欲しいですね

 

会期は残すところ一週間。お時間がある方は、ぜひとも触れておいた方がいい展示だと思います。

 

 

<余談>
華やかなビクトリーロードばかりを歩んできたわけではない安藤忠雄氏の創作に対する姿勢を知ることができる一冊『連戦連敗』です。評判いいです。

 

 

建築界の巨匠ル・コルビュジェの魅力がまとめられた一冊『ル・コルビュジエを見る―20世紀最高の建築家、創造の軌跡』。これさえ消化できれば、あなたも建築通になれるかも?

 

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